多様な教育機会確保法案の一方で

昨日、フリースクール議員連盟などが「多様な教育機会確保法案(仮称)」の試案を発表した。議員連盟は今国会中の成立を目指し、来年度に学校教育法を改正、2017年度から新法を施行したいとしている。

まだ、試案の段階ではあるが、想定される懸念はいろいろにある。すでに指摘してきた問題も多くあるが、さしあたって、今回は、あまり表にはでいないものの、気になる動きについて、書いておきたい。

今回の法案は、フリースクールの議員連盟と、夜間中学校の議員連盟の合同で提案されたものだ。昨日の議員連盟の参加者も、国会議員や文科省関係者のほか、フリースクール全国ネットワークと全国夜間中学校研究会の関係者が参加した。報道においても、おもにフリースクールが支援対象として取り上げられている。

こうしたなか、6月10日、新しい学校の会が「教育制度の多様性」をテーマにシンポジウムを開催する。新しい学校の会は、旧称を「学校設置会社連盟」と言い、株式会社立の広域通信制高校が中心となってつくられた会である。

株式会社立の学校は、2004年の構造改革特区以降、急速に広がり、これまでに広域通信制高校が21校、設立されている。構造改革特区では、NPO法人による学校設立も可能とされたが、私の知るかぎり、これまで1校も設立された例はない(もし、あったら教えていただきたい)。

広域通信制高校は、スクーリング施設などとして、サポート校やサテライト施設を全国各地に急拡大してきた。NPOのフリースクールなどにも積極的に営業にまわっており、多くのフリースクールがサポート校などを併設するようになった。

一方で、一部の広域通信制高校では、教員ひとりに対する生徒数が多すぎる、レポート添削がマークシートのみ、事務体制の不備、管轄自治体が実態を把握していないことの問題などが、文科省の調査によって指摘されている。

教育の領域を規制緩和した結果、株式会社がこぞって参入し、さまざまな問題が生じている。しかし、その問題はきちんと整理されないまま、現在に至っている。

今回の法案も、表に立っているのは、NPOのフリースクールや夜間中学校だ。しかし、株式会社の教育関係者も、この動きを熱く注視している。教育領域の市場化が何をもたらすのか、少なくとも先例はあるのだから、きちんとした検証は必要だろう。また、法案が成立すれば、確実に株式会社なども参入してくると思われるのに、いまのところ、表だって議論の場に出ていないことは、逆に、たいへん気がかりだ。

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