フリースクールの自律性は……

いま、フリースクールなどをめぐって、さまざまに政治情勢が動いているが、「教育」という枠組みからだけではなく、考えておく必要があるだろうと思う。3年前に、社会学者の貴戸理恵さんと対談した冊子のPDFを無償で配布しているが、制度問題についても触れているので、よかったら、参考までにご一読いただきたい。

下記は、その一部(山下の発言部分)。
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●グレーゾーンの問題

私は、学校にしても、労働環境にしても、やっていけないという人たちを問題にするより、やっていけない学校や労働環境を問い直さなければいけないと思ってます。

しかし、現在の状況を前提とした場合(いま現在、その状況を生きているわけですから)、不登校やひきこもりというのは、グレーゾーンの問題と言ってよいのではないかと思います。ハッキリと病気や障害とは言えない、理由もハッキリしない、しかし、やっていけない。それゆえに、親にとっても、教師にとっても、医者にとっても、やっかいな問題で、だからこそ、問い直しの契機にもなっていた。簡単に腑分けできないわけですね。

やっていけない人を、障害や病気としたほうが、メインストリームを走る人には了解が得られやすい。あるいは当事者にとっても、そういうラベリングを引き受ければ、障害年金がもらえるとか、免罪されるというか、そういう面がある。

居場所の位置づけを考えた場合も、ラベリングを引き受けて、福祉の枠組であれば、制度に乗せることができる。逆に、稼働能力があるんだと証明しようとすると、教育制度、学校として認めてほしいということになる(図5)。

そもそも、稼働能力の有無で人を選別すること自体がまちがっていると思うんですが、グレーゾーンの問題を誰が支えてきたのかといえば、家族ですよね。それを家族だけで抱え込むのではなく、共助として広げたものとして、居場所が生み出されきた。そういう共助の領域がある程度あれば、制度に頼らなくてもやっていけるとも言えます。しかし、フリースクールなども、厳しい経済状況のなか、自律的な運営が難しくなってきている。そうなってくると、制度に乗せてなんとか運営を維持したいとなる。そこで、福祉か教育かということになってくるわけですが、私は、制度にのらないで支え合う領域がないと、苦しいのではないかと思ってるんですね。だから、なんとか踏んばろうとしている。

●NPOが行政・市場の下請け化

次に、行政・市場・NPOの3つのセクターの関係を考えてみると(図6)、新自由主義のなかで行政が外部委託を増やし、一方でNPOの自律的な運営が厳しくなっているなかで、市場ばかりが広がっているように思います。たとえば冒頭でもお話ししたように、構造改革特区でできた学校63校のうち、NPO法人で設立されているところはゼロです。オルタナティブスクールと言えそうな学校は、私の知るかぎり3校のみで(いずれも学校法人として設立。そのうち1校は経営難で2011年度で閉校)、株式会社立の学校など、市場ばかりが拡大しているわけです。あるいは行政とNPOとの連携といっても、ひきこもり支援が就労支援となったように、NPO活動が行政の下請け化しているんですね。しかも、安上がりな下請け。さらには、NPOが市場の下請け化している面がある。これも冒頭にお話したように、近年、サポート校化するフリースクールが増えてきています(フォロにも通信制高校が営業に来られましたが、お断りしました)。制度が柔軟化したことで、市場的なものは広がっていても、NPOはかえって弱体化しているように思います。

アソシエーション的なもの、共助的なものが弱体化している。一方で家族も解体してきているなかで、グレーゾーンの問題を誰が支えるのか。支え手を失って、問題が宙づりになっていて、孤立化したり、シビアな状況が生み出されているのではないか。私は、そういう危機認識を持っています。

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