安倍首相がフリースクールを視察

明日、安倍首相がフリースクール東京シューレを視察するそうだ(9/8官房長官記者会見)。一方で文科省でも、フリースクールの制度的位置づけを検討する動きがあり、来年度予算で9800万円の概算要求が出されている。

超党派の議員による「フリースクール環境整備推進議員連盟」は、2008年に発足し、その後、いったん解散していたが、今年6月に再結成されていた。政治情勢は急速に動いている。

フリースクールが制度的に位置づけられることは、必要性もあるだろうが、制度として位置づける以前の問題として、フリースクールの考えは、団体や主宰者によって、実にさまざまだ。これまで、フリースクール全国ネットワークなどが中心となって、「多様な学び保障法」をつくろうという動きも起きているが、不登校やフリースクールに関わってきた人でも、意見はかなり異なる。私自身、この「法案」については、くり返し反対意見を述べてきた。関係者での議論も熟さないまま、政治情勢に翻弄され混乱を招かないか、懸念される。

文科省は来年度概算要求に「学校復帰や社会復帰を支援しているフリースクールを含めた学校外の不登校支援施設・機関による指導体制等の在り方に関する先進的調査研究の実施」をあげている。また、国内外のフリースクールへの調査や有識者会議の設置も盛り込まれている。読売新聞は、これを「フリースクール、教育機関に位置づけ、財政支援」と報じた。(2014.08.26

「学校復帰」や「社会復帰」ということ一つとっても、見解はさまざまだろう。また、多くのフリースクールは、実態としては小規模なもので、「学校」として制度的に位置づけるには、あまりに小さい。一部の大きな声だけが政治に拾われて、草の根で、小さいながらも、学校に行かない子どもたちに真摯に向き合い、つむがれてきた活動が、政治情勢に翻弄されてしまうのであれば、それはしのびない。

かといって、政治情勢を無視してすむ問題ではなくなってもいるのだろう。どういう方向に動くにせよ、これまでフリースクールに関わってきた人たちは、活動の大小を問わず、フリースクールが果たしてきた役割とは何なのか、どういう政策を望むのか、あらためて、きちんと表明する必要があると思う。また、フリースクール全国ネットワークなどに求められるのは、政治情勢を優先するのではなく、関係する人たちの声をきちんと受けとめ、「熟議」することだろう。

もうひとつ、政治情勢として気がかりなことを補足しておきたい。

フリースクール議連の中心メンバーは、親学推進議連の中心メンバーと重なっている。「親学」というのは、母性や父性を強調するなど、伝統的子育てを推進するというもので、2012年には大阪市で親学をベースにした「伝統的子育てで発達障害を予防する」という条例案が持ち上がり、発達障害に関わる当事者や学会から抗議が殺到し、撤回するという事態もあった。現在、親学推進議連は、親学を推進する法案の提出を目指している。また、今回の内閣改造では、閣僚に親学推進議連の議員が多く入ったと東京新聞は報じている(2014.9.6)。

親学推進議連は、会長に安倍晋三、会長代行に高木義明、副会長に河村健夫、小坂憲次、事務局長に下村博文が入っている。安倍晋三をのぞき、全員がフリースクール議連にも属しており、フリースクール議連の会長は河村健夫、会長代行が高木義明だ。また、フリースクール議連の幹事長の馳浩と笠浩史も、親学推進議連に属している。

フリースクールの言説と、安倍政権の新自由主義的な保守主義とが、奇妙な親和性を見せており、それが、具体的な政治情勢として浮上してきたことには、警鐘を鳴らしておくべきだろう。

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