トランプ、壁、イエモン……

連日、トランプ大統領が騒ぎになっている。アメリカの内と外に「壁」を立てて、アメリカの内側を守るというのが、その政策方針なのだろうが、内と外に「壁」を立てたがるのは、トランプ氏だけではないだろう。身近なところにも、そうした「壁」はあふれている。

たとえば、「壁」の内側に所属している正社員は社会保険なども含めて手厚く守っても、外側に属している非正社員は、低賃金で不安定雇用でも、仲間ではないから、その苦境に心を痛めることもない。市民運動やNPOなどでも、意見のちがいなどから「壁」をつくって、その内側では連帯するものの、いったん外に追い出した人は攻撃の対象になることも、ままある。

岡目八目で、よそのことだったら、誰でも「壁」は不毛だと思う。でも、自戒を込めつつ言えば、自分たちの立てている「壁」には、おそろしく鈍感になっているのではないだろうか。

紅白歌合戦で、THE YELLOW MONKEYが歌っていた。

外国で飛行機が落ちました
ニュースキャスターは嬉しそうに
「乗客に日本人はいませんでした」
「いませんでした」「いませんでした」
僕は何を思えばいいんだろう
僕は何て言えばいいんだろう
(「JAM」/作詞・作曲:吉井和哉)

自分の声が「壁」の向こうに届かないとき、その「壁」は自分の前に立ちはだかって、よく見える。でも、自分自身がさまざまな「壁」の向こうの声を聴けていないことには鈍感だったりする。誰しも、そういうところはあるのだろう。少なくとも私は、そんなに賢くないので、自力では気づけなかったことも多々ある。だからこそ、「壁」が揺るがされたときは、自分の立てている「壁」に気づける機会なのだと思う。揺るがされたことに腹を立てて、「壁」を高くするようなことだけはすまいと思う。

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