多様性と裏腹にある危険性

 昨今、オールドメディアとSNSが比較され、その是非が問われることが増えた。表にしてみたら、下記のようになるだろうか。

オールドメディアSNS
情報の流れ一方向(発信→受信)双方向(誰でも発信可能)
信頼性一定のチェック体制ありチェック機能が弱い
情報の多様性少ない多いが、玉石混交
情報の速度やや遅い非常に速い
影響力広い拡散、炎上しやすい
広告との関係広告主への批判は制限されるアクセス数獲得のために過激化しやすい

オールドメディアは大資本で寡占であるのに対し、SNSは誰でも発信可能で、そこに可能性もあるが、「エコーチェンバー現象」で、偏った価値観が強化されやすかったり、憎悪などの感情が増幅されやすいという問題も指摘されている。

ほぼ同じことが、学校とフリースクールなどの比較においても言えるのではないか。

学校フリースクールなど
情報の流れ一方向(発信→受信)双方向(子ども主体)
信頼性一定のチェック体制ありチェック機能が弱い
情報の多様性少ない多いが、玉石混交
情報の速度やや遅い柔軟で速い?
影響力広く、強固広がりつつある?
市場との関係公共性が市場化によって崩されつつある。かつては非営利の活動が主体だったが、市場化されつつある。

学校の設立は要件が厳しいが、フリースクールはNPO法人や一般市民でも自由に設立可能だ。学習指導要領の縛りもなく、双方向で自由にやりとりすることもできる。しかし、ややもすれば、偏った価値観で固まってしまう危険性がある。SNSと同じく、多様性という可能性の面だけをみて、裏腹に生じる問題を見ないのは、大きな問題だろう。


●「親学」が影響したフリースクール?

最近、遅ればせながら、賛政党の神谷宗幣氏が石川県で展開している「加賀プロジェクト」を知った。「加賀プロジェクト」はフリースクールなどの活動をしており、サイトを見るかぎり、ほかのフリースクールと同じような考えで活動しているように見える。しかし神谷氏は、「親学」に傾倒していることで知られ、カルトの危険性を疑う声もある(下記リンク)。
>極右カルト参政党(7)加賀プロジェクト

かつて問題となった塚本幼稚園や森友学園のように、極右的思想を幼児のころから教え込む教育を、加賀市が多様性のもとに認めているのだとすれば、たいへん恐ろしい。

「親学」はフリースクールの考えとは真逆に位置するように思えるが、フリースクールという概念も、そもそもあいまいで、すっかり何でもありになってしまった感がある。また、「親学」にかぎらず、どんな活動趣旨や思想であったとしても(それがいかによい内容であったとしても)、どのフリースクールにおいても、エコーチェンバー現象のような問題は生じる危険性がある。とくに、全寮制など閉じた構造になっている場合は、危険性が高いと言えるだろう(東京シューレの宿泊型フリースクールで性暴力事件が起きたように)。

だからといって、学校が一枚岩だった時代のほうがよかったということではない。オールドメディアに問題があるように、“オールドスクール”にも問題がある。だからこそ、フリースクール運動は対抗言説として多様性を訴えてきたところがあるのだが、逆説的なことに、教育機会が多様化すると、それぞれの場においては、かえって似たような価値観で固まってしまい、その場における多様性を縮減させ、排他性を強めてしまう危険性もある。いまや、多様性と裏腹にある危険性についてこそ、よくよく考えなければならないと思う。すでに、問題はさまざまに出ているのだから。




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